Kogei Art KYOTO
黒田辰秋展 木と漆と螺鈿の旅
2024年12月17日から京都国立近代美術館で始まった「生誕120年 人間国宝 黒田辰秋 木と漆と螺鈿の旅」を鑑賞してきました。
黒田辰秋は、1904年京都に生まれた日本を代表する木漆工芸家です。
父親はたくさんの職人を抱える漆塗師でしたが、当時一般的であった分業制に疑問を持ち、図案制作、素地作りから加飾までを一貫して自身で行う「個人作家」として生涯独自のスタンスを貫き、木工芸の技術としては日本で初めて重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されるなど、日本工芸史に確かな足跡を残しました。
また、先日のブログで紹介した河井寛次郎や柳宗悦などを通じて民藝運動とも深い関わりを持ちながら、いたずらな個性の表現ではなく人間の使う道具としての工芸の原点を重視し、実用性と装飾性、素材の特性の一体化を目指し、用いることで作品の良さが引き立っていくことを理想していました。
その代表作は今もそれぞれ現役で使われている京都百万遍の老舗カフェ「進々堂」の楢拭き漆テーブルや同じく京都祇園の和菓子店「鍵善良房」の欅拭き漆大飾り棚をあげることが出来ます。
また、世界的にも著名な映画監督 黒澤明の依頼で制作した家具セットや皇居新宮殿の扉飾りや梅の間用の大飾棚などを制作したことでも有名です。
さて今回の展覧会は、生誕120年を記念して、黒田が生まれ育って活躍の拠点とした京都で開催されています。
会場内は、大きくわけて、第1部で代表的な作品を通じて黒田の生涯の創作を振り返り、第2部では民藝運動との関わりや、木工芸、漆芸、螺鈿それぞれの技法に焦点を合わせて「用と美」という工芸の大きなテーマにスポットを当てています。
残念ながらと会場内は撮影が認められていませんでしたのでその様子はお伝えできませんが、素晴らしい図録が販売されていたので購入しました。
いずれの作品も決して華美ではなく、どちらかといえば質実剛健と表現できるものばかりなのですが、それでも凛とした気品を感じずにはおられませんでした。
おそらくそれが黒田辰秋が目指していた「用と美」、すなわち自身の作品を通して届けようとした自然の美なのでしょう。