Kogei Art KYOTO
京都南座の「吉例顔見世興行」と歌舞伎の魅力
師走の京都に冬の訪れを告げる風物詩、「吉例顔見世興行」が今年も南座で開催されています。このイベントは、東西の歌舞伎俳優が一堂に会し、新旧の名作が披露される特別な公演です。歌舞伎発祥の地である鴨川の四条河原にほど近い、歴史ある南座の舞台では歌舞伎独特の華やかな世界が繰り広げられます。この時期、観光客や地元の人々が集まり、歌舞伎の魅力を思う存分堪能する絶好の機会となっています。
今年も南座の正面玄関には、出演する役者の名前を墨で書いた「まねき」が掲げられ、12月1日から約3週間の興行が始まっています。
歌舞伎の歴史とその独特な魅力
歌舞伎は、17世紀初頭に誕生し、江戸時代を通じて日本の大衆文化を代表する芸能として発展してきました。その特徴は、豪華絢爛な衣装、独特の化粧法、そして大胆な演技スタイルにあります。役者の一挙手一投足が観客の心を揺さぶり、物語の中に引き込まれる体験は他の芸能では味わえません。
特に、歌舞伎の舞台美術は工芸美術と深く関わっています。舞台装置や小道具は、熟練の職人たちによる精巧な手作りで、物語の世界観を豊かに表現します。これらは、日本の伝統工芸技術がいかに生活と密接に結びついているかを象徴するものです。
かぶき踊りを創始したことで知られる出雲阿国の像
歌舞伎役者の魅力とその芸術的表現
歌舞伎の魅力を語るうえで、役者の存在は欠かせません。彼らは、独特の声色、ダイナミックな動き、そして巧みな表現力で観客を物語の世界へと誘います。特に、舞台上で見せる「見得(みえ)」や「隈取(くまどり)」は、役者の個性を際立たせる重要な要素です。見得は、特定のシーンで役者が一瞬静止し、感情の頂点を表現するもので、隈取は顔に描かれる大胆な線がキャラクターの性格や役割を象徴します。
こうした役者の魅力は、単に演技だけにとどまりません。彼らは「家の芸」と呼ばれる代々受け継がれる技術や演目を背負いながら、新たな挑戦にも果敢に取り組む存在です。古典を守りつつ現代の感性を取り入れた新作歌舞伎にも注目が集まっています。
「家の芸」を守り技術などを受け継ぎながら新しい感性を取り入れていくところは、まさに工芸美術の世界とオーバーラップします。

浮世絵に描かれた役者絵の人気
江戸時代、歌舞伎は庶民の娯楽として絶大な人気を誇り、役者たちは一種のスター的存在でした。その人気を支えたのが、浮世絵に描かれた「役者絵」です。浮世絵師たちは、当時の著名な役者の舞台姿を描き、多くの人々に広めました。
例えば、東洲斎写楽の役者絵は、表情の誇張や鋭い線で役者の個性を際立たせ、独特のスタイルで知られています。また、喜多川歌麿や歌川豊国なども、細部にわたる精緻な描写で歌舞伎の世界を色鮮やかに再現しました。これらの役者絵は、歌舞伎公演の宣伝としてだけでなく、当時のファンが手に入れたい憧れのコレクションでもありました。
役者絵と現代のアート
浮世絵の役者絵は、歌舞伎と美術がいかに密接に結びついているかを示す一例です。この伝統は現代にも受け継がれ、歌舞伎の世界観をもとに伝統と現代の感性が融合した新しい作品も生まれています。